Blood Tear


あれは、ある荒れた日の夜だった…



灰色の厚い雲に覆われた空。
唸る風。
轟く雷鳴。
そして、村一面に広がる紅い海…


真っ赤に染まるその地に転がるのは、息のない仲間達。


胸に突き刺さる刃…
切断された体…
見開かれた瞳…




守られるように母の胸の中の幼い少女…

その肌に震える右手でそっと触れてみるが、氷のように冷たく冷えきり人としての温もりは一切感じとれない…



その時痛感した…

生き残ったのは、自分だけだって……

此処にこうして息をしているのは自分だけだって……



胸が裂けるように心が痛む…

込み上げる感情に瞳が熱くなるのがわかった…



上空を見上げ、悲痛の叫びを上げる…


揺れる瞳から、堪えきれず溢れ出す涙…


力強く握った拳は爪が食い込み血が滲む…




拳の痛みなんて感じなかった…


感じたのは、心の痛み…

やり場のない怒りの感情…




ポツリと、灰色の空から雫が一つ、二つ…



そして、流れた鮮血を洗い流すように大粒の雨が降り始めた…










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