恋するマジックアワー
……頭、真っ白だったんだ。
女の子って、ちゃんと意識もしてくれてたのか。
そんな素振り一瞬たりとも見せなかったのに。
……この人、ほんとに変。
「……ふっ」
ダメだ。可笑しい。
怒ってたの、バカバカしくなっちゃった。
「ふふふ、あはははっ!」
耐え切れず吹き出したあたしに、洸さんは一瞬目を見開いて、でもすぐに口元を緩めた。
「海ちゃん、豪快」
って、目じりを下げて、ついでに眉もさげて。
洸さんは笑う。
……トクン
あ。
胸が鳴ってる。
トクントクンって、震えるように鳴いてる。
それから洸さんはあったかいココアを淹れてくれて、ふたり掛けの狭いソファの隣にわたしを招き入れてくれた。
体の大きな洸さんに、ゆるゆるのわたしのスエットが触れそうで。
直接はなにも感じないのに、全神経がそこに集中してしまったみたいで、すごく恥ずかしくなった。
う……なんかすっごい緊張……。
せっかく淹れてもらったココアも、口に含むと熱いだけで甘さなんか全然わかんなかった。