恋するマジックアワー
「あ、あのね?洸さん」
「ん?」
立ち上る湯気の向こう側で、洸さんが視線だけをわたしに向けた。
「……わたしが洸さんと一緒に住んでるの、留美子に話した」
「……」
「でも、大丈夫だよ?留美子、親友だし。黙っててくれる」
慌てて付け足すと、洸さんは「はは」と小さく笑った。
「まあ、平気でしょ。あの子は海ちゃんの傷つくことはしないだろうからね」
楽しそうにそう言って、カップをガラスのローテーブルに置いた。
お見通しか……。
言っちゃった事、ちょっぴり後悔してたぶん、拍子抜け。
なぁーんだ。
怒らないんだ。
もう一度コクリとココアを飲みこむと、今度は甘い香りに包まれた。
「いい友達持ったな、海ちゃん」
「わっ」
洸さんはそう言って、カップを持っていた手で、わたしの髪をクシャリとかき混ぜた。
グシャグシャと乱暴に撫でられて、長い髪がハラハラと目の前に落ちてくる。
「ちょ、やめてよね」
「わはっ。おお、髪サラサラ」
な……、な……。
洸さんは少し体を傾けるとわたしの髪を、その指に絡め取った。