だから、恋なんて。
身支度を整えて、何事もなかったようにフロアに戻り、今日の担当を確認すると。
さっきのことは忘れようと気持ちを切り替えるのに、ホワイトボードに割り振られたベッドを見て、瞬時にイラつく。
「師長、これってどういう事ですか?」
「ん?なにが?」
イラつきを隠さない私から視線をわずかに逸らすのは、きっと心当たりがあるからで。
「まさか…」
「いやいや、違うよ~。今日のは難しいやつなんだよ。患者さんも基礎疾患が多いから、ちょっと新人には手にお
えないかと思ってね」
「新人じゃなくてもいるじゃないですか」
「いや~、他もね、手一杯だしね。頼むよ、乙部ちゃん」
もっともらしい理由をつけて、両手を合わす師長を軽く睨みながらなんとか気持ちを静めようと、もう一度ホワイトボードに向き合う。
そこには、昨日の仕事終わりにオペ室から迎え入れた患者さんと、本日外科のオペ予定の患者さんの名前が私の担当だと示している。