だから、恋なんて。
「おい、早く見てくれよ。なんかズキズキ疼くしよ」
布団の上から自分の足を触るおじさんは、催促するようにも一方の手で私の手を取る。
「ちょっ、」
ぐいっと手首を引っ張られて、ベッド柵から身を乗り出すようにバランスを崩される。
その勢いで、痛いと言っていた足に手をのせてしまって、慌てて手を引きながらおじさんの顔を見る。
「ごめんなさいっ、大丈夫です?」
上半身を起こしたおじさんは、ニヤニヤしながら私を見ていて。
…それで、担当の子がいないことに納得する。
どうせ若いスタッフにこうやってセクハラをしていたんだろう。
患者さんだから無視するわけにはいかないし、そもそも痛みなんて主観的なものは、当事者じゃないとどれほどのレベルかはわからないから、嘘くさくてもその都度対応しなければならない。
こういう人ってほんとに懲りずに一日中こんなことで私たちを振り回す。
自分の受け持ち患者さんの状態も気にはなっているけれど、こういう人には一言言わないと仕事にならない。