だから、恋なんて。

入院中の患者さんとほぼ同じメニューが出される職員食堂は、選べるメニューはないけれど、コンビニに売ってある弁当よりも安くて早く提供される。

そばとかうどんとか、ラーメンの日が多い気もするけれど、患者さんのメニューってこんなもんなんだろうか。

確認しようにも、ICUでは絶食の患者さんばかりだからどうしようもない。

「あ、ほら。いましたよ、青見先生」

トレイを持って列にならび始めると、一番奥の窓際に座る彼を見つけた榊がこそっと耳打ちする。

時々窓の外を見ながら麺をすする姿を見ながら、あぁ、今日もうどんかと思う。

「いやいや、いいって別に、報告しなくても」

財布を持つ手を振って、目の前に出される天ぷらうどんをトレイに受け取る。

「え?でも美咲さん、先生のこと気になってますよね?」

同じようにうどんの入った丼を受け取る榊は、周りなんて気にしてないようで意外と目ざとい。

さすがベテラン看護師だね、周りがちゃんと見えてらっしゃる。

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