だから、恋なんて。

もうコイツの口から出る言葉は信じないようにしよう。

うん、そうしよう。誰にだって同じようなこと言ってるんだし。

適当に返事してその場を通り過ぎようとすると、ニヤニヤ笑いながら腰をかがめて顔を寄せてくる。

「やっぱ、美咲さん、スッピンでもキレイだね」

「なっ、ちょっと」

値踏みするように遠慮もなしに素顔を見られて、途端に恥ずかしくなって顔を背ける。

そうだ、夜勤明けなんだし普通にスッピンなんだったと後悔しても

「最低」と捨てセリフを吐いてするっと白衣の横を通り過ぎざま。

「恥ずかしがってるのもいいけど」

小声で囁かれたソレは聞こえなかったフリをして足早に更衣室に逃げ込む。

ドクドクと耳の奥まで聞こえる音は自分の胸の鼓動と同じリズムで。

今、絶対、顔赤いはず……。

手に持ったままのいちごミルクを頬にあてると、ひんやりとした水滴が気持ちよかった。
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