だから、恋なんて。

考え込む私に、手に持ったグラスに視線を落とした千鶴がポツポツと話し出す。

「一人が長いとさ、自分でもわからないうちに自分のルールみたいなもんが張りめぐらされちゃう気がするんだよね。で、それを崩せないし、崩されるのも嫌なの」

「……ルール?」

「ルールってほど取り決めたことじゃなくても、生活のペースみたいなもの?美咲みたいに不規則な仕事だと余計にあるでしょ。夜勤明けは約束に縛られたくないとか、次の日忙しそうだと思ったら前日は早めに寝たいとか」

「それは、まぁ…うん、あるけど。でもそれは誰だって、千鶴だってそうじゃなかった?」

「そう、だったよ。そうじゃないと、このペースを崩すとよくないとか、明日の仕事に支障がでるとか、そんなこと思って二人の生活にイラつくこともあったよ」

そのころを思い出したようにクスリと笑う千鶴。


そうなんだよね、一人暮らしが長いと他人と過ごす難しさみたいなのが増える気がする。
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