だから、恋なんて。

うーん……それは嬉しいような、そうでもないような複雑な気分。

だって私はあの日家に来た直人さんの様子も、千鶴の買ったセクシー下着も知ってるわけだし?

並ぶ二人を見て、こっちのほうが恥ずかしくなる可能性が高い。


かといって断る理由も見当たらず、しぶしぶ千鶴の後をついて駅に向かう。

世間では休日の今日は、駅構内もなかなかの人混み。

こんなに人の多い中で、はたしてそんな簡単に直人さんを見つけることができるのかと思ったりしてたけど、そこはそれ。

あらかじめ待ち合わせ場所が決まってたのか、はたまた愛の力ってやつか、いとも簡単にキョロキョロしている直人さんを見つける。

美味しいと評判のドーナツ屋さんの前で、そのドーナツ店の紙袋を下げているスーツ姿の直人さんは、ある意味目立っていてわかりやすかった。

ふっとこちらに視線を向けた直人さんがふんわり微笑んで、千鶴に向かって小さく手を上げる。

なんて嬉しそうに笑うのよ、この人は。

今、絶対に私のことなんか眼中になかったに違いない。

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