だから、恋なんて。

なんだかんだ言いながらもう歩き出そうとしている二人の背中に向かって慌てて声をかける。

「ちょっとストップー!私、いいからね。ここで、遠慮するんで。明太子はまたの機会にいただきますので、ね?」

「でも賞味期限あるし、ねぇ?」

「うん」

おーい、気付けよっ!千鶴。目一杯気を利かしてるのに、全然通じてない。

「や、もう私も疲れたしさ。そろそろ帰って休むよ」

「でもどうせご飯作らなきゃダメなんだから、食べていけばいいのに、ねぇ?」

「うん、うん」

上下にうんうんと首を振る直人さんが、千鶴に忠実な大型犬に見えてくる。

いつの間にか千鶴の買ったセクシー下着を含む数個の紙袋を持たされてるし、もう片手には重そうな自分の鞄を持って、首しか動かせないのかもしれないけど。

「私は適当にあるもの食べたらいいからさ。それより、直人さんに早くご飯たべさせてあげたほうが」


「あれっ、美咲さん?」

またも途中で言葉を遮られ、後ろからぽんっと軽く肩を叩かれる。

っていうか、この軽薄そうな調子のいい声は………。

< 275 / 365 >

この作品をシェア

pagetop