だから、恋なんて。
嫌な予感がして振り向きたいような振り向きたくないような気持ちになる。
「……あ、もしかして」
私の少し後ろに視線を止めている千鶴が、思いついたように私に視線を移す。
「こんなところで偶然会うなんて、運命感じますねー」なんて軽口をたたきながら、当たり前のように私の隣に立つ男は「あ、どうも結城と言います」とか言いながら何故か直人さんに握手を求めている。
どう見ても両手塞がってるし。
あ、ほら、イイヒトの直人さんだから、すごい無理して手を出そうとしちゃってるし。
「ね、美咲。この人って…例のチャラ…?」
うっ、ヤバい……こっちはこっちでえらく愉しそうな顔でアイツと私を交互に見ている。
「あ~っ、そうそう!ゆ、結城先生?二人はもう帰るところなので」
厚かましくも直人さんと何やら談笑を交わしている医者の腕を不本意ながらグイグイと引っ張る。
「ん?なに?美咲さん、急に積極的だね?」
「っ、バカじゃない?そんなわけ…」
空気の読めない医者がこれ以上余計なことを言い出さないうちになんとかこの場から連れ去りたい。
それはきっと私の顔にも如実に表れていたと思うのに。
「あぁ、それじゃあ先生もご一緒しません?」
ニヤリ、口端を上げて笑う千鶴は、きっとよからぬことを考えているはず。