だから、恋なんて。
なんで、コイツがチャラ医者のこと…。
「結城先生のことご存じなんですか?」
嫌な予感と動揺で、不規則なリズムで耳奥に響く心臓の音が聞こえる。
コイツにばれない様に必死でなんとも思っていない表情を作る。
これ以上コイツに弱みを見せたくない。
「ご存じって…大学一緒だし、同期だけど?一緒には働いたことないけど、当直バイトで会えば話するし」
最後のほうの言葉は、ちゃんと聞こえてなかった気がする。
もしかしたらチャラ医者は本当に知らなかったんじゃ……なんて甘い考えは持てない。
先輩ならまだしも、同期の医者仲間に自慢しないわけがない。
そういう最悪な奴だと、ずっと前から身に染みている。
それでも。
「乙部さん、休憩先にありがとうございました」
「え、あ……じゃあ、行かせてもらうね。私のほうはバイタル終わってるから」
そう言うのが精一杯だった。