だから、恋なんて。

「美咲、夜勤明けで疲れ取れてないんでしょ?私がなんか作るから座っててよ。そのつもりでいっぱい買ってきたんだし」

「うん、ありがと」

確かに、あのスーツケースを持ってあれだけの量の買い物をしてこようと思ったら、かなり大変だったと思う。

それに、何か作っているほうが、しんみりムードにならなくて千鶴にはいいのかもしれない。

冷蔵庫の中をのぞき込みながら、どんどんと食材を取り出す千鶴は、「ん」と言って缶ビールを差し出してくる。

フローリングの床から立ち上がってそれを受け取ると、千鶴の持つ同じ銘柄のビールをコツンと合わせて「乾杯」と声を合わせる。

「私の、家出記念に」

フッと笑いながら缶ビールに口を付ける千鶴は、今まで見たこともないくらい哀しそうで、疲れて見えた。

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