山神様にお願い


「・・・今説教は勘弁して、俺、負傷中・・・」

「あんたが手を出したんでしょうが!!」

 ツルさんはわざわざ龍さんの耳元で叫んだ。うおっ!と龍さんが顔を顰める。

「・・・鼓膜まで破れたらどうすんだよ、お前!」

「いっそ一回死んできなさい!」

 痛みに顔をしかめながら、龍さんがアッカンベーをした。ツルさんが彼の肩をバシンと殴る。

「・・・あーあ。どうするんですか、店・・・」

 呆然と店の中を見回して声を漏らした私をちらりと見て、龍さんが言った。

「俺、死ぬかも、シカ」

「――――――はーい?」

 ぐるんと首を回して振り返った。

 その怪我では死ぬまでいかないでしょ、何言ってんの?そう思って私は龍さんを見る。自然に呆れた声が出た。

 龍さんはぐったりと椅子にもたれながら、へへへへ・・・と小さく苦笑する。

「いや、殺される、の方か」

「ツルさんにですか?」

 同情出来ない、そう思って首を傾げる。

 するとまだへへへへ、と笑っていた龍さんが言った。

「・・・いやいや、虎に、俺、殺される・・・」


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