山神様にお願い
『キャッシャーの鍵と表の鍵だけしめて、いつものところおいといて。裏口は開けっ放しでいいから』
「はい」
『気をつけて帰れよー。もうこれ以上の怪我人や事件はいらないぞー』
私はちょっとだけ笑った。
「店長も、気をつけてください」
『うん。あ、シカ』
「はい?」
『怖かったんだな、悪かった』
皆にも謝らなきゃなぁ、そう呟く店長の声が悄気ているように聞こえて、私は慌ててしまう。
「あのっ!あの、大丈夫ですから」
『だって、泣くほどだったんでしょ』
かーっと顔が熱くなったのが判った。やっぱりバレてたよね!?もう、もう、私ったら!!一人でぶんぶんと片手を振り回して懸命に言い訳する。
「いえ!て、店長の声を聞いたら安心しただけで、ええと、その、別に怪我もしてないし、あのー!大丈夫なんです!」
『・・・必死だな。ま、とりあえず今からちょっとバタバタするから切るね。気をつけて帰るんだぞー』
「はい、お疲れ様です!」
うん、と返事が聞こえて電話が切れる。私はカウンターに電話をおいて、倒されていない椅子に腰掛けた。