山神様にお願い
そこのところがイマイチ判らないと思ってツルさんに聞くと、彼女はさあ?と首を捻った。
「何だったかな、トラさんのお母さんが保険屋さんだとか聞いたわよ。それで、従業員の傷害保険も加入してたとかで。龍さんが壊したものは保険金で直せるらしいわ」
「へえ」
「私もよく判らないんだけど。それに是非あのヤンキー崩れ達に弁償して欲しいけど。―――――ま、とりあえず、こんなもんかな」
ツルさんは両手を腰につけて、ふう、と息を吐き出しながら店を見回した。
「綺麗になりましたねー」
私は二人の掃除道具を抱えてもつ。よし、と頷いたツルさんが、テキパキと鞄を持ちながら言った。
「ごめんね、私、時間だわ。次の職場にいくんであと宜しく。・・・と言っても別にもうないと思うけど」
「はい。手伝い遅くなってすみません。店長に言ってから帰った方がいいですよね?」
眠ってるの邪魔しないほうがいいかもだけど、そう思って言ったら、何故か、裏口を開けつつあったツルさんが一瞬動きを止めた。
「・・・トラさんに会ってから帰りたい?」
「は?えーと、いやだって、来たことも知らせないままじゃあやっぱり・・・」
言わないほうがいいんでしょうか?私は巨大なクエスチョンマークを頭の上に打ち上げながら言った。
「そうか、そうよねー・・・。うーん、でも寝起きのトラさんには、シカちゃんは会わない方が・・・ブツブツ」