山神様にお願い
最後の方になるにつれて小声になってしまって、ツルさんが何て言ったのかが聞こえなかった。私は耳の後ろに手をやってジェスチャーでそれを示す。
「ツルさん?何ですか~?」
何やら難しい顔をして考え込んでいた彼女が、パッと顔を上げた。
「・・・私が外に出たら、一応ここの鍵閉めてね」
「え?」
裏口の鍵、しめちゃうの?私は首を捻る。でも、私も挨拶したら帰るけど、と思って。
ツルさんがにやりと笑った。
「きっと私の想像通りになるような気がするから」
「え?あの、ツルさん、意味が判りません」
私が近寄りながら言うと、彼女は手をヒラヒラと振った。
「いいのいいの。こっちの話。余計なことは言えないよね。じゃあ、トラさんに宜しくね、ツルは次にいったって言っておいてくれる?」
「あ、はい、了解です」
「お疲れ様」
最後ににっこりと笑って、その瞳の中に何かの色をのこして私を見ながらツルさんがドアを閉めた。
私はちょっと考える。
・・・・鍵?何でしめないとダメなんだろう。だって、店の中に人がいるのに?それに何を言いかけていたのだ、ツルさんは。