山神様にお願い


 ちょっとよく判らなかったけど、判らない内は言うことを聞いておこう、そう思って鍵をかける。そりゃ2階に寝てる人放置して無施錠は防犯上まずいかもね。

 そして、カウンターで行き道に買ってきたペットボトルのお茶を飲んだ。

 仮眠中・・・店長疲れてるんだよねえ~・・・。可哀想に。そう思いながら、階段から2階の森を覗き見る。・・・階段の下からではいつもの緑色の天井しか見えない・・・。

 まあ、ツルさんからの伝言もあるし、そう思って、私はそろりと階段を上っていった。

 確かに、眠っていた。

 夕波店長は茶色のソファーではなく、緑の床にクッションをおいて、壁に背を預けた状態で眠っていた。

 微かな寝息が聞こえる。一瞬躊躇して、私は静かに近づいた。

「・・・店長ー」

 つんつんと腕を指でつついた。・・・起きる気配、なし。うーん、困ったな。やっぱりメモ書きを置いて帰ることにしようかな~。

 唇を噛んで考える。・・・うーん。ま、あと一回だけ。

「おーい、夕波店長さーん」

 腕に手をかけて、ゆっくりとゆする。彼の体も揺れて、黒髪が額でサラサラとこすっていた。

「・・・だーめだ」

 熟睡だ。何か、窮屈そうな格好だけど、このまま放置だよね。よし、メモに手紙書いて、私は帰ろう。

 そう思って、森の中のテーブルに置いてあるメモ帳を一枚引きちぎった。


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