山神様にお願い


 ええと・・・。少し考えて、シャーペンを動かす。

 手伝いに来たこと。ツルさんからの伝言。よく寝ていたから帰るってこと―――――――

「・・・シカ」

「ひゃあっ!」

 急に低い掠れ声が聞こえて、私は文字通りに飛び上がった。

 パッと振り返ると、壁に頭を預けて座り込んだ状態で、店長が目を開けていた。

「・・・び、び、ビックリした・・・。あ、おはようございます~・・・」

 心臓をドキドキさせながら言うと、細目でこっちをみていた店長が、片手をあげておいでおいでをする。

「え?あ、はい、何ですか?」

 私はテーブルに書きかけのメモとシャーペンを置いて、しゃがんで店長に近づいた。

「・・・いつ来た?」

 寝起きの小さな声で、まだぼーっとした表情の店長が聞く。私は4つんばいで近づきながら答えた。

「えーっと・・・4時過ぎです」

「今何時?」

「そろそろ7時ですね」

 腕時計で確認してから私は答える。

「ツルは?」

「次のバイトに行きますって。ウマ君は大学へ行ってます」


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