山神様にお願い


 ふーん、小さく呟いて店長は目を閉じる。また眠るのかな、そう思って私は小声で続けた。

「下の掃除、終わってます。まだ何かやることありますか?なければ、私も帰りますけど・・・」

 突然パチっと店長が目を開いた。奥二重の瞳が真っ直ぐに私を見て、一瞬身を引いてしまう。

「・・・下のドア、開いてる?」

「え?あ、私閉めました。あの、ツルさんが、閉めといてねって・・・」

 何故か焦って私は言い訳までする。やっぱり閉めといて正解だったのかな?店長がこう聞くってツルさん判ってたのかな―――――――――私がそんなことを思っていると、店長がふ、と笑った。

「ツルが?・・・・はは、やってくれる」

 目線を合わせるために床に座り込んだ状態で、私はそれを黙ってみる。何で店長が笑うのかが判らなくて。

 片手で顔を覆ってしばらく笑っていた店長が、指の間から私を見た。

「・・・シカ」

「はい?」

「俺、寝不足で、まだボーっとしてるんだ」

「はあ、そうですね」

「だから、理性があんまりないんだ」

「え?ああ、そうですか」

 話の方向が判らなくてとりあえずの相槌を打つ。


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