山神様にお願い


 ひゅっと店長の口角が上がった。目もカーブして、企んだような笑顔になる。え?私はその変化に驚いて、体を固めた。

「判ってないんだろうなあ~」

「え、何をですか?」

 クククク・・・と本当に楽しそうにまた笑う。・・・うん?だから、何なのよ~、私はキョトンとするばかり。すると、片手を顔から離して、店長がサラリと言った。

「嫌とかダメなら今のうちに言って。あと10秒で、シカを襲うから」

「――――――――は?」

「一度手出したら俺止められないから、拒否するなら今の内だぞー」

「―――――――ええ??」

「1、2、3・・・」

 いやいやいや!何だって?変な顔をして、私はマジマジと夕波店長を凝視した。

 前でだらりと緑色の壁にもたれたままで、店長が淡々とカウントを始める。私はようやくパニック状態に陥って、激しく瞬きを繰り返す。

「4,5――――――」

「えっ!?あの・・・店長?何て仰いました?」

「6、7。俺に襲われたくないなら、今のうちに逃げろって言ってるんだ。8。いいのか?」


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