山神様にお願い


 ・・・いや、いいのかって・・・。え、本気?私は混乱したまま動けないでいる。平然とそんなこと言ってますけど・・・え、だって、店長私に興味なかったんじゃなかったっけ?・・・・まあ、本人からそう聞いたわけではないんだけど!でもずっと手を出さなかったし、そんなそぶりも―――――――――・・・

「9。・・・そのシャツ、汚れてもいいと思って着てきた?」

「へっ!?・・・あ、シャツ?は、い・・・。だって掃除っていうし・・・もう古着で・・・」

 わけが判らないままで答える。状況が飲み込めてなくて、理解出来る質問がきたことで飛びついてしまった。だけど、それは間違いだったとすぐ後に判った。

「そっか、それは好都合。――――――――10」

 じゅう?私は頭の中で繰り返す。何が、10?ええと?店長は何を数えてたんだっけ?

 店長が、ゆっくりと大きな笑顔を作った。

「・・・逃げなかった。いいんだな、襲われても。俺はちゃんと言ったぞ」

「え、店長、だって、ちょっと待っ――――――――――」

「10秒、待った。もう待たない」

 言うや否や、両手が伸びてきて、私は全身を引っ張られた。悲鳴を上げる間もなく店長の胸に抱きしめられる。店長の着ている灰色のTシャツが目の前にあって、その色を確かめようとしていたら顎を持ち上げられた。

「て」

 ん、と言葉は消えてしまった。大きな手で腰と顎を固定されて、私は彼と口付けを。


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