山神様にお願い


「・・・はあ。それで、虎・・・あー、夕波はそこにはいないんですか?・・・・はい、ふーん・・・」

 眉間にくっきりと皺を寄せたままで龍さんはぼそぼそと会話している。

 店長の名前が聞こえた私とツルさんはついに手を止めてしまって、もう露骨に龍さんを眺めた。

 宴会のキャンセルではないらしい。

「まあ取り敢えず了解です。オーナーには伝えときますので。・・・え?もう言ってあるんですか?・・・判りました」

 チン、と音を立てて電話を切った龍さんに、ツルさんが詰め寄った。

「何何、何ですか?トラさんから電話だったんですか?いつ帰るって?」

 龍さんは暫く考えるように間を開けて、あー・・・と口を開いた。

「虎からじゃあない。まあ取り敢えず、あいつはまだ帰れないんだってよ」

「え?」

「は?」

 私とツルさんが声を上げる。まだ帰れない?それは何ゆえ?

「え、それはどうしてって?てか電話はトラさんからじゃないんですか?ご家族の方?」

 イライラした様子のツルさんが龍さんに更に近寄る。

 すると、眉間に皺を寄せたままで何かふに落ちない顔をして、龍さんが私をじっと見た。

「・・・ええーと・・・?何でしょうか、龍さん?」

 私はわけが判らず挙動不審となる。

「ちょっと龍さん!?」

 つかみ掛かりそうな勢いのツルさんに、待ったと片手を上げてみせ、龍さんは私に聞く。


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