山神様にお願い


 ツルさんが心配そうな顔で私を見る。

「知ってた?シカちゃん」

「はい?ああ、いえ、知りません。・・・でも、そりゃ何か面倒臭そうなことがありそうな発言して行きましたもんね、店長」

 私が何とかそう言うと、ああ、と龍さんが手を叩いた。

「確かに確かに!言ってたなあ、虎!実家にはゴタゴタがあって戻るの遅くなりそうって。これかなー、その婚約者とか、そんなのも含むのかもな~!」

 合点がいったらしい龍さんの眉間が晴れた。一人でうんうんと頷くと、手を伸ばして私の頭をポン、と軽く叩く。

「だったら大丈夫だよ、シカ。ただ本当に遅くなるってだけだろ。虎はシカを捕食したんだから、簡単には手放さないよ」

「はあ」

「そうよ!シカちゃんがっかりしないで~!何か結構な田舎みたいだし、もしかしたら親同士の決めた婚約者とかそんなのかもしれないわけだし!」

 ツルさんも私の肩をポンポンと叩く。

 そして二人は開店準備に戻ってしまった。私はちょっと驚いていた。だって、二人が私は傷付いているものだって決め付けていたから。

 ・・・傷付いてなんか、いないんだけどな。

 そう思って、私は一人で苦笑する。別に心配なことなんてない。まだたかだか1週間会えてないだけだし、それに店長の今までの言動を考えたら――――――――・・・


 それからもう2日経ったとき、夕方の山神に、日々立オーナーがいきなり現れたのだった。

「やあ、皆、ご苦労さん」

「あら、オーナー!」


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