山神様にお願い
はい、と同じタイミングで龍さんとツルさんが頷いたのが見えた。
「虎、どうかしたんですか?てかアイツ、まだ戻らないんですか?もう10日経ちましたけど、一昨日にまだ戻りませんって、えー、家族の方から電話があったきりですよ。本人からは連絡なしです」
龍さんが腕を組んでオーナーに聞く。婚約者云々は省くことにしたらしい。きっとそれは、私がここにいるからだろうけど。
オーナーは、うん、と一度頷く。
「うちにも電話あったよ。実家の方の整理が、まだつかないらしいんだな。それで・・・・何て言ったかな。忘れたなあ~・・。ま、いいか、とにかくまだ当分こっちに戻れないそうだ」
「え」
ツルさんと私がハモった。
まだ帰らない?そんなに大変なのかな?若干混乱して、私はオーナーの言葉を待つ。情報が少なすぎて何も判らないのと同じでしょ、これでは。忘れないでよ、そんな大切なこと!そう思って、ちょっとオーナーの好印象が下がってしまった。
「だから」
オーナーはカウンターをこんこんと指で叩きながら言う。
「予定外に虎の不在が長引いているけど、まだしばらくはこの状態で店あけてくれ。龍、お前が取り仕切るんだぞ。瞳ちゃんがいれば大丈夫だとは思ってるけどね。ああ、瞳ちゃん」
ツルさんのことを名前で呼ぶんだな、そう思いながら見ていると、ツルさんは何ですか?とオーナーに近寄った。