山神様にお願い
遅ればせながら、ようやく声が戻って私は笑顔を作った。だけどそれは引きつっただけになってしまう。
「だ、だい、じょう・・ぶ」
「じゃ、なさ気な感じ」
今度はあからさまに心配そうに表情を曇らせて、小泉君が言う。私は更に慌てた。
「本当に!本当に大丈夫なの。ただ・・・ただ、最近は相手が多忙で・・・会えてなくて」
「あ、何かそれって耳に痛い台詞」
うわお、そうか!そういえば私達も就活で会えなくて破局したカップルだったっけ!?
「ちがっ・・・そうじゃなくてー!」
あてつけじゃあないんです~!!もうワタワタしてしまって、図書館だというのに大きな声で言ってしまった私だった。
途端に館内の学生達の視線が一斉に私に向かう。・・・・ぎゃあ。私は赤面して黙り込んだ。
ククク・・・と口元を押さえて小泉君が呟いた。
「・・・変わらないのはそこも一緒だね」
もう、凄い恥かしいんですけど・・・。泣きたい気持ちで私は自分のコートの中に顔を埋めてぐりぐりと押し付けた。
「ううう、やっぱり私って成長してないよねえ~・・・」
「そこが愛嬌なんだから、変える必要はないんじゃね?」
「そうかなあ~・・・」