山神様にお願い


 やった、センセーのこと名前で呼びたかったんだよね、そう言ってニコニコと彼はガッツポーズを作る。

 反対に、私はがっくりと肩を落とした。

 ああ、疲れる・・・・。私は情けない顔をして彼を見上げる。綺麗な若い肌にピンクの唇。茶色の瞳を煌かせて阪上君は天使の笑顔を作っていた。

「阪上君、あのね、私は君とデートはしないわ」

 ゆーっくりと言い聞かせる口調でそう言うと、阪上君は何故か更に笑顔を深くした。

「じゃあお茶は?」

「飲みません」

「じゃ、ラブホ行こ。僕、抱くのも結構上手だと思うよ。女の子の反応みてたらさ」

 ・・・どうしてお茶を断られた後にラブホってことになるのよ~っ!!私は冬にはあまりなかった眩暈を感じて目を閉じる。

 でもまずは、手首の解放だわ。

 左手を添えて、彼の手を私の手首からゆっくりと離す。そして改めて阪上君を見上げた。

「君とはどこにも行きません」

「へえ、どうして?」

「・・・行く必要もないでしょう。私はもう君とは無関係だし・・・その、ちゃんとハッキリ意思表示はしたつもりだったんだけど」

 阪上君は曖昧な笑い方をした。その瞳に私は驚いた。いつの間に、こんなに色っぽい視線をするようになったのだろう、この子は。


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