山神様にお願い


 右手と左手に一つずつ。それで一気に二人の首を打ったんだ。

 いきなり目の前に居た虎の顔は無表情で、でも細めた目が強烈に冷たかったのだけを覚えてる。あの目には正直ぞっとしたね。

 こっちが怪我するとか、そんなことに対して全く感情がないような目をしていた。極端な話、死んだとしても知るか、そんな感じに思えたんだ。怖かったね。

 その次に目が覚めたときはびしょ濡れで、酷い頭痛がした。

 龍さんがそう言って、思い出したか頭をさすっている。今は何ともないはずなのに痛そうな顔をしていた。

「ああ、そうでしたね、びしょ濡れ!」

 ツルさんがそう言って両手を叩いた。ウマ君と私で身を乗り出す。

「え、え?どうしてびしょ濡れなんですか?」

 ツルさんが楽しそうに笑った。

「二人がいきなり倒れたから私は本当にビックリしてしまって、悲鳴をあげてしまったの。何が何だか判らなくって。いきなり大人が二人崩れ落ちたから、凄く怖かったのよ。するとトラさんが、また、なーんてことないって声で、淡々と言うの」

 ―――――――――大丈夫だよ、ツル。気を失ってるだけだから。

 ―――――――――え?気を失ってる?きゅ、救急車いりますか!?

 ―――――――――ああ、もう起こす?なら簡単だよ。こうすればいいんだ。

「って。それで、カウンターに入っていって、大きな鍋に水をたーっぷり汲んで、戻ってきたのよ」

「うわー、それってもしかして・・・」

 ウマ君が顔をゆ歪めながら言う。私も想像してしまった。・・・それは、ヤダな。


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