山神様にお願い


 ツルさんが重々しく頷いた。

「そう、ザバーッとね、景気良くぶっかけたわけよ。二人にね」

 ・・・・おおお~・・・。ウマ君と一緒に私も顔を歪めてしまった。

 まず、このお世辞にも美しいとは言えない居酒屋の床に寝転がるのだけでも嫌なのに、しかも水まで・・・。うわああ~・・・。

「・・・あれは、酷かった」

 龍さんがうんざりした顔で言うのに、3人で突っ込んだ。

「悪いことしたからでしょ?」

 って。

 それで黙った龍さんを尻目に3人で盛り上がる。それは凄いですねえ!凄かったわよ!素早くて、何が何だかちっとも判らなかったもの!トラさん淡々とってところが怖いっすねえ!って。

「で、静かかつ強烈に怒ってる店長に座り込んだままで二人は謝ったけど、トラさんはそれで許さなかったのよね。あれ、龍さん似合ってたけどな~」

 ケラケラとツルさんが笑う。あ、あれだ、って私も判った。ウマ君が言ってたやつ。丸刈りだ。

「本当に丸刈りにしたんですか?」

 ウマ君が龍さんに聞くと、うん、と頷いた。

「それで、なかったことにしてくれるって言うからさ。オーナーにバレたら勿論首だと思って、その時金がいったから、本当に首は勘弁して欲しかったんだ」

 ならどうしてそんなことをしたんですか?とは聞かなかった。本当に、遊んでいたんだろうから。今よりも若かった龍さんも店長も、きっともっとやんちゃだったのだろうって。


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