山神様にお願い


 差し出された手を握って、何とか立った。だけど何も見えなかった。水が邪魔して、何も見えない――――――――――

「シカ」

 店長の声が聞こえる。

 ようやく会えたのに、私はまた彼の顔を覚えられない状況にしてるじゃない、全く・・・。自分をしかりつけて、精一杯目を見開いた。

 滲む、店長の笑顔。

 ぽんぽんと頭の上に手を置かれた。その手はそのまま瞳まで下りてきて、私のどうしようもない涙を拭う。

 ふむ、って店長の声がした。

「よしよし、もうオッケーだね~」

 って。何がだろう。私はえ?と聞き返す。

「・・・何が、オッケーですか・・・?」

「うん?―――――――ああ、ほら、もう、ね。シカが、俺のことをちゃんと好きになったね」

 彼が手を伸ばし、肌蹴た私の胸元を直す。ボタンをぱっぱと留めながら何でもないことみたいに言った。

 私はその店長の顔を見上げながら小声で聞く。

「判るんですか?」

「うん」

「・・・凄く会いたかったです」

「うん。山神様にお願いした?」

「・・・しました」


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