山神様にお願い


 場所、移したほうがいい?そう店長が聞くから、私は首を振った。だけど、取り敢えずお風呂に入らせてください、とう伝える。

 湯船に浸かって気持ちを整えよう、そう思ったんだった。それに・・・・体中ベタベタだし。

「どうぞ。それか一緒に入る?」

「いえ!一人で入ります!」

 断固として断ると、苦笑していた。

「そう言うと思ったけどね~。しかし拒否がそんなに早いと拗ねちゃうよ、俺。まあツルたちに電話もするから、ゆっくりどうぞ~」

 って。

 宣言通りに一人で、ゆーっくりと湯船につかった。体中がとろけていくのが感覚として判る。・・・・ああ、極楽。私はゆったりした気分で目を瞑る。

 店長が電話を掛けている声がたまにもれ聞こえていたけど、私は出来るだけ自分の中に意識を集中させていた。

 いいこと、ひばり。店長は婚約を破棄してきたって言ったのよ。それは、私と付き合いたいからだ、と思う。そんな言葉ではなかったけど、それでもともかく!それを有難く思って、例えば彼の過去の話が私のキャパを大いにオーバーする話であっても、ちゃんと最後まで聞くことよ!

 口元までお湯につかってぶくぶくと息を吐いた。

 湯気でいっぱいになった浴室には、さっき使ったボディーソープのいい香りが満ちている。

 それを吸い込んで、ふうーっと吐く。それを何回も繰り返すうちに、落ち着いてきた。

 ・・・・よし、大丈夫だ。

 浴槽のふちを持ってゆっくりと立ち上がる。

 私は、大丈夫だ。


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