山神様にお願い


「お待たせしました」

 ちゃんと体も頭も乾かして服を着た上で、店長が待つ部屋に戻る。彼は大きな椅子に深くもたれて腰掛け、テレビを見ていた。

 私をちらりと見て微笑を零す。

「・・・覚悟してきたって顔だな」

「してきました!どんな話でも大丈夫です!」

 私がそう言うと、あははは~といつもみたいに彼は笑う。

「俺はどんな話をしそうなんだよ~。ま、別にいいけどさ~」

 とりあえず、座ったら。そう言われてやっと自分が突っ立っていたことに気がついた。

 店長は、よっこらせ、と椅子に座りなおすと、立膝をしてテレビを消してからゆっくりと話し出した。

「俺の留守中に山神の皆に何か聞いたかもだけど・・・俺は昔いきがってたんだよねー、中学と高校の時ね」

「いきがってた?」

 中学と高校の頃?龍さんがいってた、虎は喧嘩慣れしてるんだろうってアレかな?

「そうそう、世に言う不良だったんだよ。結構悪い部類のね」

 店長は片手で自分の目元を覆って、淡々と、でも途切れることなく喋りだした。集中するのに私の視線が邪魔なようだった。でもお陰で私もドギマギすることなく話を聞けたのだ。

 それは、ちょっと前、今から10年前までの店長の話だった。


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