山神様にお願い


 私の目の前で、彼はひょうきんな顔して肩をすくめた。

「なっただろ?実際のところ、俺は自由の身だ」

「それは結果論でしょう!」

「結果が大切なんだよ、シカ。まあともかく、その時の俺にとってはどうでも良かったんだ。ヤクザでも良かった。ただの不良にはもう飽きていた。それ以上踏み込んだ世界に入るかどうかの選択肢をくれたんだ、って思ってたな」

 せ、選択肢~!?私は驚きの余り、また口が開けっぱなしになってしまう。

 普通の高校生が大学行くか就職するかで悩む時期、この人は一般人でいるかヤクザになるかで悩んでいたんだってこと~!? 

 くらくらくら・・・私は暖房の効いた部屋の中で眩暈に襲われる。

 ああ、本当に、色々と新しい世界が出てくるわ、この人といると・・・そう思っていた。


 相手の家に事情がって、こういうことだったんだ!?組を継ぐかどうかなんて大きな問題だとは思えないくらいに淡々と話すから、せいぜい家族の誰かが病気だとか借金があるとか、そんなのだと思っていた。

 ・・・・わお!だ。私が惚れた人は、もしかしたらヤクザの組頭あたりになっていた人なのかもしれないのか~!!

「片山さんとうちの母さんは勿論大反対した。どうしてあの子を巻き込むのって、片山さんは刃物を持って元ダンナのところへ怒鳴り込んだらしい」

 それも結構なお話で。既にショート寸前の私はそんな感想を胸の内で漏らした。

 母の心配は勿論だし、片山さんが泣くのは嫌だった。だけど、俺はもう返事をしてしまった後だったんだ。組の中でお披露目もされた。ヤンキー上がりの高校生に、ヤクザがずらっと並んで頭を下げるのは見ものだったね。恐ろしくもあったけどね。


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