山神様にお願い


 それで―――――――――――――

「ストーカー被害にあった」

「え」

「組長は死んだ。娘は組から出て行った。だから普通の娘なんだ。もう組長に遠慮して見ているってだけでなくてもいいんだ、そう思ったバカ共が、彼女に襲い掛かったりした」

「そそそっ・・・それで!?彼女は無事だったんですか?」

 うん、と簡単に店長は頷いた。だって、まだ婚約解消してなかったし、高校の間はって言ってたから、俺が送り迎えしてたんだって。

 喧嘩では負けない。そういう意味でも彼女を守れたから良かったって。

 私はつい息を止めて聞いていて、その言葉を聞いて息を吐き出した。・・・ああ、その時の彼女に、店長がついていて良かった~って。

 娘さんが可哀想だ、私には想像もつかないそんな環境で、それでも普通を目指して生きて行こうって思う強さには感服した。

「そして、あまりにバカ共の数が多いのを見かねた片山さんの元ダンナが、娘を隠そうとした」

 その時に、驚いたことに片山さんが名乗り出たらしい。私が預かるわって。高校生の間、俺がいたから結構な頻度で娘も片山さんに会っていた。それで情が湧いていたらしいんだな。

 あの子は、今度は私が守るって、そう言ってた。

「それからは、うちの母さんも一緒に面倒を見ていて、娘のようになってしまったんだよね」

「・・・はあ。よかった、ですね」


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