山神様にお願い


 そのお願いが、通じたのかもって私は思っていたのだ。

 悪戯をして、それが成功したかはあの子ならとても気にするはず、と思っていたから、私から乗り込まなくても阪上君がまた待ち伏せしたりするのだろうって思っていたのだ。

 だから私は、外出時には気をつけていたのだ。あの背の伸びたやたらと端整な顔の男の子の企んだ笑顔を発見する時があるだろうって。

 曲がり角や駅前、ふとした時に高校生の姿をみてはドキっとしていた。そろそろあの子は冬休みに入っているはずだし、私に会いにきそうだなって。

 なのに、来なかったのだ。

 少なくとも私には何のコンタクトもなかった。

 合わなかったし、嫌がらせのメールや電話みたいなのも皆無だったし、時間がたって私の怒りも薄れ、正直忘れかけていた。

 10日くらい経っていたから。

 阪上君が私のケータイで悪戯をして、店長が戻って来て、10日くらいが。

 その間何もなく、私は山神だけをバイト先としてお仕事を頑張ったし、結構な頻度で店長が私の側にいたのだ。

 だから、安心していた。

 もう来ないかな、って。

 これでやっと平穏な日々だって。

 だけど、彼はまた現れた。

 私が見覚えのある私服姿で、ふらりと。いつものように悪巧みをしているような笑顔で、口元を上げて。

「センセー」

 って、言いながら。


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