山神様にお願い


 ・・・・・・・謝られてしまった。

 私は罵詈雑言を飲み込んで、マジマジと目の前の男の子を見る。・・・そういえば、いつもよりも迫力がないような・・・。うん?ちょっと待って、そういえばさっき、この子なんて言った?

「――――――センセーまで?」

 私は首を傾げてかつての教え子を見詰めた。

「までって何よ、どういう事?私以外の誰があなたに噛み付いたの?」

 何言ってるの?親御さんにバレて叱られたとか?いやいや、でも私まだ阪上家には通報してないんだけどな。

 怪訝な顔をする私から目を反らして、自嘲ぎみに彼は笑う。

「やっぱりセンセーは知らなかったんだね。そうだろうと思ったから言いにきたんだけどさ・・・・」

「だから、何なの?ハッキリ言ってよ阪上君」

 イライラしながら私がそう聞く。彼は歪んだ微笑を浮かべながら言った。

「センセーの新しい彼氏?ほら、目の細い、色白の男の人だよ。ニコニコ笑っているけど、凄い怖かったよ、あの人」

 ――――――――店長っ!?

 私はがっと口を開けてしまった。だけど言葉が出てこないのだ。理解するのに少し時間がいった。

 目の細い、ニコニコと笑った、色白の男性。夕波店長だと思うけど!!・・・・ええと。ええと?あら?店長が、阪上君に、何だって?

「え、え?あの人が、君に何かしたの!?」

 勢い込んで、彼との間合いをつめる。阪上君は自嘲気味の微笑みをしたままで淡々と言った。


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