山神様にお願い
「この間、僕に会いにきたよ」
「え、嘘」
「嘘にしたかったよ、僕も。怖い、不良みたいな汚い格好した態度の悪い男が4人ほど一緒にいたよ。それで言ってた。君には口で言っても判らないらしいから、直接的な脅しをすることにしたって」
「・・・」
「鹿倉ひばりが困ってるって。僕がしたことも言ったことも、あの人は全部知ってたよ。だから思ったんだ、この人、センセーの新しい彼氏だろうなって」
「お・・・・脅し、た、の?」
店長が阪上君を?
うん、と阪上君は頷く。
「悔しいからあの人が言った言葉はセンセーに教えたくないんだ。だけど、僕は判ったって言った。勝てない喧嘩はしない主義だし・・・もう、そろそろ僕、格好悪いよね」
何てこと。店長が―――――――――私の知らないところで、阪上君を脅していた??
私の頭は確かにそのことにショックを受けていて、呆然としていたのだ。
だから、店長がいつの間にかトイレから戻って来ていたことに気付かなかった。
阪上君が顔を上げて、会釈したのだ。そして言った。
「こんにちは、この間はどうも」
って。
私はびくっと体を震わせた。そしてゆっくり振り返る。