山神様にお願い


「でも部屋出ることは言わなきゃなんないし。言ってみたら、同棲しようって言われるかもよ~?俺が君を養っていくよ、な~んてさ」

「飛鳥!」

 うきゃきゃきゃきゃ~、楽しそうに妹は笑う。・・・ああ、この子に話をしてしまったのが間違いだった。私はがっくりと肩を落として炬燵のテーブルに額をつけた。

 名前の通り、この子は昔から自由奔放な子ではあったのだ。日本バードウォッチング研究会に属すうちの父親が、自分の娘姉妹につけた名前は空を羽ばたく鳥の名前。ひばりと飛鳥。飛鳥は雀になるところだったらしく、それには母親がハンガーストライキに出て反対したとか。

 まあ、お陰で山神に拾ってもらえたのだから、父には感謝している。私と同じく飛鳥だって名前に動物が入っているから山神で働けるはずだ。募集のタイミングさえあえば。

 昔から猪突猛進のこの子をハラハラしながら見ていたけど、私が家を出てからそれはさらにヒートアップしたらしい。

 高校生になってからは服装の自由な学校へ行っていることもあって、頭なんぞ金髪といって間違いないような色をしていた。

 その明るい色が、正月の光満ち溢れる居間でキラキラと光っている。

「何の話してるの?ひばりが凹んでるじゃないのよ」

 母親がお茶を持ってきてくれたので、私は顔を上げた。そして妹を指差す。

「ちょっとこの子、問題じゃない?高校生でいいの、この発言」

 そしてこの外見。今朝も妹のへそ出しルックを早速叱ったところだった。女の子がお腹出してちゃいけません!て言う私に、飛鳥は胸出すよりいいでしょ~?って言ったのだ。

 本当に私の妹か!?と思って愕然とした。

 母親は肩を竦める。


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