山神様にお願い


「今更どうしようもないでしょ、躾係のひばりが出て行ってからやりたい放題なのよ。まあ、バカな男には引っかかるなって言うしかないなってお父さんは言ってるわ」

「バカな男なんて、あたしが食べちゃうわよ!そんなヤツといたって面白くもないわ~」

 飛鳥が寝転びながら笑った。

 ・・・・・ああ、何かこの子、龍さんでさえも自分の思い通りに操りそうで怖い。そう心の中で感想を述べて、私は立ち上がった。

「ご馳走様、ちょっと散歩してくるね」

 友達といく初詣は昼過ぎの予定だった。

 それまでちょっと、自分が生まれ育った町を見てみたかった。まだ朝だけど、新年の空気は澄んで気持ちいいはずだ、そう思って。

 行ってらっさ~い、帰りにポテチ買ってきてね~、そう言う妹に手を振って、私はブーツを履く。

 ちょっと頭を冷やすべきだ、そう思ったのだ。

 新年の住宅街は、静かだった。

 皆家の中で温かくして、家族と過ごしているんだろう。朝からずっとやっている正月番組を見ながら、お酒なんか飲んでいるんだろう。

 白い息が目の前の光景を霞めては消えていく。

 私は何ともなしに、ゆっくりと出身校までの道のりを歩く。

 この小さな郊外の町はコンパクトで、小学校も中学校も高校もほとんどひっついて建っている。

 皆は大体同じようにそのまま高校までを過ごし、巣立って行ったのだ。だから幼友達は皆高校までがほとんど一緒だった。


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