山神様にお願い


 ヤクザは俺には関係ない。だから俺はすぐに興味をなくした。ただ、そうなのか、と答えただけ。

 この彼女が2ヶ月後、俺にとんでもない話を持ちかけてくるのだ。

 当然俺はそんなこと知らなかった。彼女はあくまでのただのクラスメイトで、偶然の一致で知り合いになっただけってつもりだったからだ。

 だけどビックリすることに、その片山さんのダンナが。いや、正確にはその時には二人は離婚していたようだったから、元ダンナになるわけだけど。その「片山さん」が現れたのだ。彼女、クラスメイトの橋本朔美と一緒に。

 学校帰りだった。道の途中で黒塗りの車が横で停車して、窓が開いたのだ。スルーして歩き続ける俺に、コタロー、と話しかけてきた。

 俺を覚えているか。目の小さな爬虫類のような顔をしたオッサンはそう聞いた。

 俺はただ見下ろして、首を振った。

 するとオッサンはにやっと笑って言ったのだ。俺は、覚えてる。愛子が世話をしているからな、って。愛子というのは片山さんの名前だ。それで俺は、ああ、片山さんの元ダンナか、と思った。ドアが開いたから何も言わずに車に乗り込んだ。送ってくれるならラッキーだ、と思っていた。

 無言で乗っていたら「行き先は聞かないのか」と聞かれたので、「家まで宜しく」と答えた。そしたら乾いてかすれた声でゲラゲラと笑っていた。

 連れて行かれたのは辺鄙なところにある喫茶店で、橋本朔美が待っていたのだ。俺達の姿を見るとパッと立ち上がって、夕波君、ごめんねいきなり!と頭を下げだした。

「いいよ~、何の用か知らないけど。ここ、奢り?」


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