山神様にお願い


 高校3年の時に相模組の跡取り問題の為に橋本朔美と婚約した俺。あの時片山さんは元ダンナに乗り込んで行ったのだ。包丁を持って、泣きながら。あの子をヤクザに巻き込まないで!って。だけど結局俺は話を受けて、橋本朔美と一緒に過ごすことになった。

 学校ではカップルらしくはなかったけど、帰りは家まで送っていった。橋本は「あの夕波の彼女」だと噂され、めっきり男子からのちょっかいや告白が減ったらしい。確かに綺麗な女子だったし、明るくて普通の女子高生だったから、狙っていた野郎も多かったのだろう。だけど俺が側にいたせいで、そんなこともなくなったわ、と笑っていた。「夕波の女」に手は出せないってことなのね、って。

 結婚はしない。だから彼女に手も出さない、片山さんの元旦那との約束は守る、そう母親たちとも約束して、兄弟姉妹のような関係で半年過ごしたころ、問題の相模組組長が死んだ。橋本はすぐに相続の放棄をし、有力候補ではあったナンバー2が組長に就任、これで婚約も解けるなって気楽に思っていたけれど、そうは行かなかったのだ。

 橋本は、組の下っ端ヤクザ達にどんどん狙われるようになった。

 もう後ろ盾がない彼女はただの美少女だったってわけ。婚約者としての俺はいるけれど、ヤクザ者にとってはただの男子高校生。怯える必要はないと彼女を追いかけまくった。それで俺は、そいつらを追っ払うためにやっぱり一緒にいた。恋愛感情があったわけではないが、二人の母親たちとも仲良くなっていた橋本は、家族や身内のような意識が芽生えていたのだ。同じ年の妹のような。俺は暴力では問題なく対応出来たし、怒り爆発した片山さんの元ダンナが組を引き締めにかかったので、その問題も割りとすぐに片付いたのだけれど。

 とにかく、卒業しても俺と橋本朔美は婚約を解消してなかったのだ。


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