山神様にお願い
俺は都会へ出て、知り合いから紹介された日々立オーナーの店を任されている。それなりに好き勝手やっていて居心地はいいし、もうこっちへ戻る気も薄れていたけれど、体調の悪化した片山さんが「もうあなた達、本当に結婚したら?」などというから、それでもいいかな~って思ってたんだ。まあ親しいと言えるし。他に好きな女がいるわけでもなかったし。
橋本朔美本人は「私は好きな男の人と結婚するの!」とずっと言っていたけれど、30歳までにどうにか出来なければコタローとでもいいよ~なんて言っていたし。
けど、出会ってしまった。
シカに。
だから、もうここには戻らない。
春にうちの店にバイトできだした女子大生に、まさか自分がはまるとは思わなかった。
気楽な気持ちだったのだ。それと、性欲と。とにかく反応が楽しい純粋培養されたような鹿倉ひばりという女に、俺はぐんぐん興味を惹かれていった。これはただの性欲なのかそれとも本当の愛情なのかを確かめる為に色々してみたけれど、ちっとも判らないから実力行使に出たりもした。
その結果。うわ~、って思ったのだ。
・・・俺、この子が好きなんだわ。
それに気がついて、変わっていく自分の感情を面白く眺めていつつ毎日を過ごしていたら、一昨日、ついに片山さんが死んだと知らせが来たのだ。
ごちゃごちゃの家と積み上げられた手続き。それを俺は、橋本朔美と片付けていく。なんせ血縁関係がない俺達だから、片山さんの死亡書類を手に入れるだけでも大変だった。離婚したとはいえ片山さんを深く愛していただろう元ダンナは、2年前に病死している。だから本当に俺達しかいなかったのだ。