山神様にお願い


 当然あるかと思った拒絶もなく、シカはただ流されて、腕の中でとろけていた。

 あの感覚。

 セックスは気持ちいい。それは判っていたけれど、今までにない感じがした。

 ぶわっと体中の血が煮えたぎって、今すぐ滅茶苦茶にしてやりたい欲求と、温かく抱きしめて壊れないように包み込みたい欲求。二つが俺の中でぶつかって、死ぬかと思ったほどだった。

 あまりにも体の相性がよくて、しかも恋愛感情を持っている相手とだと、あんな必死の動物的行為だって凄く神聖なものに昇華するのだな、と判った。

 何度抱いても足りないけれど、俺ではなくシカの方に問題があるのだ。だから、この機会にと一度手を引いた状態になっているってわけ。自分がこれほど柔らかい人間になっていたってことに驚いた。以前なら、相手の気持ちなど考えもしなかっただろう。

 問題は実にシンプル。あの子が俺に惚れてない。

 今はまだ、ただ俺のペースに流されているだけ。好意は持っているのだろう、だけどそれじゃあ足りないのだ。どうしても俺にぞっこんになって欲しかった。

 それが嫌ってほどわかっていたから、死にそうな思いでこっちに戻ってきた。

 本当は一緒に連れて帰りたかったけれど、渾身の力で我慢して。側において、朝も昼も晩も抱いていたいけれど、その欲望に耐えている。

 電話もない。メールも。シカからのそれを待っている俺は、ムカついてイライラして、その力を片付けにぶつけているのだ。

 1分おきくらいに携帯をみてしまうけど。


 

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