山神様にお願い


「これで自由よ!!あたし、よーやく、本当によ~うやく、ここと縁が切れたのよっ!!」

 ばんざーい!そう叫んでその場でクルクルと回っていた。ひゃっほうー!って言っている。よっぽど嬉しかったのだろう、放っておいたらタップダンスくらいしそうだった。

 彼女の楽しそうで明るい笑い声は風に乗って、空高くに舞い上がっていく。

 俺もようやく笑顔になって、橋本に言った。

「お祝い、するか?どっか美味い店で」

「するする~!!ひゃっほう~!!」

 結構なテンションで彼女がそう叫び、そのままバタバタと大通りに向かって駆けていく。

 ・・・そうか、自由か。

 俺はその後をついていきながら、ぼんやりと考えた。

 ・・・俺も、普通の独身に戻ったってことだよな、今は。婚約者もいないんだから。好きな女と普通に結婚でも同棲でも出来るってことだよな。

 橋本の喜びが伝染したらしい。

 俺は口元が笑うのを止められず、妙にニヤニヤしたままで歩いていく。

 ああマジで、今すぐにシカに会いたい。

 会えたら──────────その場で襲ってしまいそうだけど。

 想像したら、また笑えた。

 多分あの子は真っ赤になって、思いっきり膨れっ面をして抗議するんだろう。だけど瞳を潤ませていて、あの肌は柔らかく、声も可愛くかぼそくなるんだろう。それを俺は楽しく思って更にいじるはずだ。ああ、早くそれが見たい。



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