山神様にお願い


「私は大学の4回生です。今年、無事に就職が決まりました」

「あ、良かったね、オメデト」

「え、あ、ありがとうございます。・・・ええと、だから、ですね」

 何か調子が狂うぞ!ここまできたらわかるだろうけど、まあ、とりあえずは最後まで・・・。

「ですから、来年の2月くらいまでしか働けないんです。更に他にバイトを一つ家庭教師をしてますので、そっちとの兼ね合いで入ることになるんですけど――――――」

「うん、判った。いいよ」

「へ?」

 にこにこと、相変わらず大きな笑顔で、店長さんは言った。

「君は聞き返しが多いな。つまり、一年以内で、掛け持ちってことだよね。こっちはそれでいいよ。それで、いつから入れる?」

 マヌケな顔だったとはおもうけど、私は暫く口を空けっ放しにしてしまったのだった。

 とにかく、こうして私の大学時代最後のバイトの面接は終った。

 私はここ、居酒屋「山神」で、夕方の5時から夜12時まで、週に入れるだけ、雇ってもらうことになったのだった。

 店を出て、昼過ぎの太陽の光を浴びながら、しばらく呆然と立ちすくむ。

 だって今までの断られてきた数の面接を思えば!


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