山神様にお願い
詰め寄る私に、まったく悪びれなく阪上君は笑った。
「とにかく、僕参加するんだよ。センセー宜しくね」
嫌ですよっ!そう怒鳴りたいけど、ぐっと我慢する。そんなこと言ったって、既に決まってることならどうしようもないではないか。
それにしても、本当にこの子は――――――――――――
「山神様にお願いごとが増えるわ」
ため息をついて言う私に、阪上君が首を傾げた。
「山神様?ああ、センセーが行ってる居酒屋の新興宗教だっけ?まさか嵌ってるとかじゃないでしょ?」
教えてやらない。私は自分の鞄を引き寄せて、本日の課題を引っ張り出す。今日作ってきたプリントは3枚、結構難易度は高くしてみた。これをさせている間に、鞄を持って下へおり、阪上家の母とお話をしよう。
そう思って彼の前にプリントを突き出すと、それを受け取りながら阪上君は言った。
「ま、何でもいいんだけどねー。どうせお願い事なんて中身もバレバレだしねー、センセーは単純だから」
「失礼な高校生よ、あなたは本当に!」
ふんと行儀悪く鼻を鳴らすと、綺麗な瞳を細めて彼は嬉しそうに笑う。
「当ててみせようか?」
「・・・黙ってやりなさい」
「そうだな、アレでしょ、センセー、最初のお願いは彼氏のこと」