山神様にお願い

 問題の、オープンキャンパスが来た。

 でも朝からうんざりして大学にいったわりには、午前中は何事もなく終った。オープンキャンパスは親も一緒にくる人が多いし、そうでなくても友達と来る人が多い。沢山の高校生で溢れた会場で、阪上君とばったり会うこともなかったのだ。

 それに、彼はお母さんと一緒に来ているハズ(せめてもの抵抗で、そのようにセッティングしたのは私だ)。

 学校案内、学長の挨拶と説明、ビデオ鑑賞、それからそれぞれの学部の特色や案内が始まる。

 私は自分が所属している社会学科のブースで名前を書いて貰ったりチラシを渡したりと忙しく、お昼をとる時間もなかったのだ。

 やっと休憩時間をもらえたのはもう2時だった。

「あー・・・お腹すいた」

 学食は空いているだろう。だけどご飯もほとんどないと思うから、もうコンビニでいいや、そう思って、学内にあるコンビニへ足をむける。

 ここでも品薄の中、何とかサンドイッチと紅茶を手に入れて、自分のお気に入りの場所へと向かった。

 3号館の通路からちょっと外れたベランダだ。ここは人通りも少なく、風がよく通るのでお弁当持参の時もよく来る場所だった。

 彼氏の小泉君とも、よくお昼をここで食べたものだった。就活が始まるまでは。

 真夏の昼過ぎ、うだるような暑さの中、日陰を見つけてそこに腰を下ろす。汗で湿った額を風は通り抜けて、ショートボブの私の髪を揺らしていく。

 今日は、あとは学生課に行って終わりを告げたら帰れるな。それで、今晩は山神に入る日だから5時までは自由ってことで―――――――――


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