山神様にお願い


「さ、さ、阪上君!?ちょっと離れなさい~!」

 既に私より背が高くなっている自分の生徒に、こんなところで抱きつかれるとは!ところ構わずぎゅううう~っと抱きついてくる彼の頭をぐいぐいと手の平で押しまくった。

 だってだって皆見てるよ~!ってか、見てないで助けてよ~!私が嫌がってるのは見たらわかるでしょうが~!!

 顔をぐいぐいと私に押されて、阪上君は悲鳴を上げる。

「い、痛い!痛いから、センセー!!」

「なら離れなさいーっ!」

 べりっと音がしそうな力を入れると、しがみついていた腕からようやく離れることが出来た。

「ちょ、センセー!」

 無視だ無視。苦情を言いたいのはこっちです~!

 私は髪の毛振り乱してそのままダッシュで図書館を走り出て、大階段前まで来てから漸く止まり、荒い呼吸をつく。

「は、はあっ・・・何、何よ、一体!?」

 セミが大合唱をする暑い空気の中、私は一人汗だくでパニくっていた。

 びびび、ビックリしたあああ~!!いきなり抱きつくとか・・・何考えてるんだ、高校生!!

 くるりと振り返ると、ぶらぶらと歩いてくる阪上君。顔にはいつもの笑顔が。

「センセーって、結構足速いんだね~」

 なんて言ってる場合じゃない!私はぶるぶると怒りに拳を震わせながら男の子を睨みつける。


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