山神様にお願い
その風に空気が動いて観葉植物の葉っぱが揺れていた。
「ほら、言ってごらん」
「・・・何ですか?」
「魂抜けた理由を言えっつってんの。俺が、優しい言葉使いの内にいう事聞いた方がいいと思うよ」
ぎゃあ、これは脅しだ!私は口元を引きつらせる。
「ええと、その」
視線を私に固定したままで、店長は淡々と言った。
「シカの今晩の勤務態度は問題だ。仕事は腑抜けでしていいものじゃあない。接客業でお客さんに気分よく過ごせてもらえないなら、お金は支給出来ないぞ。理由も言えないなら今晩はもう上がってもらう。他のメンバーにも迷惑だからね」
ぐっと詰まった。かなり、痛かった。
邪魔だから帰れって言われるとは思ってなかった。
その厳しさは社会なら当たり前のことなんだろう。それは判ってるつもりだった。だけど今まで家庭教師しかしてこなかった私は、その点甘えていたのかもしれないと、初めて考えた。
許してもらえるのではないかって。
でもそうなんだ、この人は私のお友達や近所の苛めっ子のお兄さんではない。あくまでも、職場の上司なのだ。
そう思った。
「・・・すみません」