二重人格神様~金と碧の王~

いのりが部屋を出て行ったあと、グレンはベッドに横になりながら月を眺めていた。


大きな眼で月を見つめ、何かを考えているよう。いつもの子供らしい顔とは違いその顔は真剣で瞬きひとつしない。

そんな時間をすごしていると、部屋のドアがあき、誰かが入ってくる。


だが、グレンは身動きもせず月をみている。近づく足音はやがてベッドの前で止まり、それが合図のようにグレンは口を開いた。


「言う通りにしたよ…これで、いいの?」

「えぇ、上出来で。グレン様」



月明かりに照らされ、映し出されたのはフェイランだ。口元をつりあげ、ベッドに座るとグレンの頭を撫でる。


その腕を嫌そうに振り払い、フェイランを睨みつける。


「どうして…どうして仲を切り離すような事をするの?せっかく、どっちのお兄様もいのりと仲良くなったのに…」


そう、先ほどグレンがいのりに言った事は全フェイランの策略だった。勉強会の時に、フェイランに言われあのような事を言ったのだ。



「でも、グレン様?あなたが言ったことは事実よ。その事実は花嫁としていつかは知らなくてはならない事だもの」


「でも…」


「仲良くなるのはいいことよ。でも、仕方がないじゃない…現に海鈴様の力が弱って、グレン様が表に出てきてるのは本当のことだもの…グレン様が表になることは一族の歴史が許さないの」


「だからって…いのり…迷った顔をしてたよ…僕、見てられなかった」


「グレン様…」


振り払われた手を伸ばし、そっと頭を撫でる。



「こんな事させて、ごめんなさいね。だけれど…そろそろかたをつけなくちゃいけないの。ルーテル様の事も、裏であるグレン様のこと…そして…彼女の父親のこと」


撫でていた手を離し、フェイランは立ち上がる。そして、ドアに向かっていく背中にグレンは叫んだ。


「フェイラン!」


「…なんですか…グレン様」


「僕…フェイランのこと…よく分からない。フェイランは…グレンお兄様の方が好きなくせに、海鈴お兄様をいつもたてる。内心はグレンお兄様が表に出て来れば良いって…思ってるくせに、嘘をついているんだ…僕には…わかるよ。だって、フェイランはグレンお兄様に助けられたからここにいるんだもん」



「グレン様…戯言はそのくらいにしなさい」


「フェイラン…」


「大人の気持ちは…かわるものなの。好きな者がいても、それと同じくらい好きになることもある。だから、彼が思う彼女と時を共にするには…表と裏がバランスを保たなくてはいけない。崩れたら、ダメなの」


「……」


「これ以上、悪いことはしないわ。ただ、どっちも裏と表である自覚をもってもらうだけ。本当に、それだけよ」




そう言うと、フェイランは部屋を出た。しまったドアを見つめ、グレンはため息をはく。


「…よく…わからないよ…」





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